我が家には、ベトナム人の妻と、8歳の娘がいる。
普段の私は、妻と娘の笑顔を何よりのエネルギー源にしながら、平穏な日々を送っている。
しかし、そんな穏やかな夜に、突如として私の時間を根こそぎ奪い去る魔物が現れた。
それが、たまたまスマホの画面に流れてきた「縦型ショートドラマ」だった。
きっかけは本当に些細な出来心だった。
娘がスヤスヤと眠りにつき、妻も一息ついた深夜。
リビングの座椅子に深く腰掛けた私は、「まあ、1話が1分くらいなら、ちょっと見るだけ……」と、軽い気持ちで再生ボタンをタップした。
それが運の尽きだった。
息もつかせぬスピーディーな展開、登場人物たちの濃厚な感情のぶつかり合い、そして何より、1話ごとの終わりに必ず用意されている絶妙なクリフハンガー。
「えっ、ここで終わるの!? 次はどうなる!?」と、私の親指は画面を上へ上へとスワイプするのをやめられなくなってしまった。
気づけば、アラフィフの重い瞼をこすりながら、視聴できる分だけ一気に完走。
時計の針はすっかり深い時間になっていた。疲労感と共に私の胸に押し寄せてきたのは、後悔ではなく、確信めいた強い興奮だった。
「これだ。縦型ショートドラマやアニメの需要は、これから間違いなく爆発する」
自分がまんまと沼にハマったというこの強烈な実体験が、私の中に眠っていた謎の使命感と創作意欲に火をつけた。
私は異世界ものの小説を書くぞと意気込み、少しずつ作成しはじめていた。
しかし、妻が車で事故を起こしてしまい、なんと自腹での修理代47万円!
こりゃ楽しく小説を書いている場合ではない。
手っ取り早く収益化しているYouTubeやTikTokで修理費を稼ぐしかない。
そう決意し、小説執筆は休止にしていたのだ。
しかし、物語投稿サイトTALESで開催されている「LINEで配信されるショートアニメ原作コンテスト」の記事を読んでしまった。
「9,700万人が利用するLINE上で配信される縦型ショートアニメの原作を募集」
「準大賞以上でショートアニメ化確約」
……夢があるじゃないか!
自分の頭の中の妄想が、あの縦型画面を通じて何百万人もの目に触れるかもしれない。
あの夜、私から見事に睡眠時間を奪い去ったあの強烈な引きを持つストーリーを、今度は私が仕掛ける側になるチャンスだ。
しかも大賞なら賞金30万円。
やらない手はない。
私はすっかり鼻息を荒くして、コンテストへの応募を即座に決意した。
しかし、勢い込んで応募要項のページをスクロールしていた私は、ピタリとスマホを持つ手を止めた。
画面には、見過ごすことのできない条件が並んでいた。
『作品合計文字数3万字以上』 『募集期間:2026年3月31日(火)23:59まで』
カレンダーを見直す。
期日まで、ちょうど残り1ヶ月ぽっちしかない。
……3万字? 1ヶ月で?
単純計算で1日1,000字だ。
数字だけ見れば「いけそう」と錯覚しがちだけれど、私はプロの作家ではない。
長時間勤務である夜勤専従の仕事をこなしながら、note、YouTube、TikTokの毎日更新を何とかこなしている。
夜勤勤務のない夜は夜で8歳児のあふれんばかりのエネルギーと向き合うパパ業もある。
妻との夫婦の会話だって大切にしたい。
そんな日常のあれこれをこなしながら、期日までに3万文字以上、作り続けることができるのだろうか?
しかも、ただ文字数を埋めればいいわけではない。
求められているのは「1話目からの明確な見せ場」「毎話のクリフハンガー」「読後感のよい爽快感」。
実にシビアな世界である。
正直、不安は尽きない。
途中で筆が(スマホを持つ指が)止まってしまうかもしれない。
しかし、挑戦しなければ結果はゼロのままだ。
「異世界ファンタジー」か、それとも「痛快な逆転劇」か。
1分間で読者の心を鷲掴みにするフックを、なんとかひねり出してみようじゃないか。
アラフィフからの無謀な挑戦。
果たして、石川パパンは3月31日のデッドラインまでに3万字の壁を越えられるのか?
夜長を味方につけて、家族の寝息をBGMにしながら、いっちょ本気で挑んでみようと思う。
私はやるぞと思ったら、後先考えずに即行動してしまう性分なので、見切り発車で連載しはじめてしまった。
もうね、後戻りできないのは分かっている。
願うならば、あの時の私のように「続きが気になって眠れない!」と言わせてみせたい。
\神の子が異世界化した現実を救うまでの果てしない物語はこちら!/










コメント